飼料情勢から考える飼料自給率

 
知り合いから頼まれて、現在行っている無償の農業コンサルの話を時間があるときで良いのでどうしても
書いて欲しいとの依頼があったので、超不定期連載です。
 
記念すべき(?)第一回は、畜産業における今年の飼料情勢を鑑みた中での自給飼料についてです。
 
シカゴの穀物市場において、今年、大きくトウモロコシ、大豆の相場が跳ね上がりました。
その後、やや落ち着きを見せているのが現状です。
この背景には、アメリカでのトウモロコシ栽培での干ばつが引き金となったわけですが、その前の年も
マイロ(こうりゃん)の主産地であるテキサス州で大干ばつが起きました。そして、ここ数年大きく右肩上がりに
なっている新興国の需要量増大。大手商社や穀物メジャーと話をしていても上がらないのはおかしいと
数年前から話題になっていました。それが、この秋にとうとう爆発し、配合飼料が大幅に高騰する事態と
なっています。
また、牛の場合は、草食動物であるため、草(繊維源)が必要になります。
こちらも、アメリカ、カナダでのチモシーヘイの不作、オーストラリアでのえんばくの乾草(オーツへイ)
収量が少なく、良品ばかりであったための安価品の品薄状態と非常に厳しい輸入粗飼料情勢です。
国内に目を向けてみると、東北、関東では、福島第一原発の事故による影響により、せっかく作った
草地が利用できない、また、除染作業中というところが多くなっています。
 
そのような中、何を手当すると良いのか?何を作ったら良いのか?という質問をいただくことがあります。
 
答えは・・・
 
 と、言っても、一つではありませんし、絶対これだと断言するのは難しいのが現状です。
 しかし、私が考えるところ、「目的」は何なのか?何を必要として作るのか?という原点にかえって
考えることはできると思います。※ここで大切なことは、目的を上回る結果を得ることを期待しないこと!
 
 牛を養う中で基本は、繊維です。繊維は、物理面、栄養面、科学的機能など多面的に評価する必要が
あると思います。それぞれを役割分担させることでより必要なものが浮かび上がってきます。
例えば、稲ワラが豊富にある場合は、物理性は、稲ワラに任せればよいのです。嗜好性の問題があれば、
限界量を見出せば良いのです。今は、AMTSやNDSなどの(もちろん、NRC、CPM、日本飼料標準でも良い)
飼料計算もありますし簡単に結果は導けます。稲ワラが無ければ、他のものから物理性を確保すれば
良いのです。しかし、この場合だと、その他の役割もその粗飼料に担ってもらう必要が出てきます。
そういう中では、今一度、稲ワラの利用を考えることも必要でしょう。
話が稲ワラばかりに行ってしまいましたが、北海道を除く地域では、春収穫のイタリアンライグラスが多く
栽培されています。イタリアンライグラスは、品種数が多く、多収であり、栽培が容易である事から、利用量は
多い牧草であると言えます。イタリアンライグラスについては、ガサは多収である一方、デンプン収量が少ない
ところが難点です。NFCのほとんどが糖であることから、牛の第一胃(ルーメン)でのデンプン供給源とは
なりません。配合飼料が高騰する昨今、デンプン供給を配合飼料に求めるのは、コストアップにつながるだけ
です。その中で、麦類の混播を行ってみるのも一つでしょう。積雪地帯で無ければ、大麦が最もお勧めです。
しっかりとデンプンが入った大麦は、単播であれば、NFCが30%近くまで上がります。その中身は、デンプンが
多くなっています。それは、混播でも効果はある程度期待できます。
もちろんデンプンだけにターゲットを絞って考えた場合、夏作のトウモロコシは外せません。トウモロコシは
子実から得られるデンプン量が他の作物と比べ群を抜いています。当たり前ですよね。配合飼料の主原料
ですから。ただ、トウモロコシは、外皮が硬く、品種(タイプ)によってもデンプン消化率が異なるので、難しい
ところです。この点の改善については、またいつか書きたいと思います。ここまでは、炭水化物について
書きました。
 
 長くなったので、今日はここまでにします。次回は、タンパク質の話から続けたい(?!)と思います。